千日回峰行

 僕も29歳の頃は純粋だった。その頃は消防学校で消防車両の機関員の養成を担当していた。仕事はキツかったけど、使命感に燃えていた。しかし、教え子の一人が自家用車で運転を誤り津久井湖へ車ごと突っ込んで亡くなったときは、俺の教え方が不味かったからだと自らを責め、毎夜、うなされて悩んだ。

 今は、当時に比べ賢くなったというか狡くなった。世間にも自分にも誤魔化しながら生きている。もはや当時には戻れないけど、あの世へ行く前に、今一度、人間として純粋な気持ちになれたらと思っている